YouTubeの詐欺動画が通報しても消えない最大の理由は、通報そのものが即時削除を意味せず、AI審査の限界、詐欺師の巧妙な手口、広告収入を中心としたビジネスモデルとの矛盾という複数の構造的問題が複雑に絡み合っているからです。著名人の顔と声を無断で使った投資広告、「今すぐ登録すれば月収100万円」と煽る怪しい動画、有名企業家になりすました仮想通貨のプレゼント企画など、明らかに詐欺と思われるコンテンツが、何度通報しても残り続けることに違和感を覚える人は少なくありません。実は、YouTubeの通報機能は「審査の対象として登録される」仕組みに過ぎず、削除を保証するものではないのです。さらに、毎分500時間以上の動画が新規にアップロードされる膨大な情報量に対し、AI審査と人的審査のリソースが追いついていないという現実もあります。本記事では、YouTubeの詐欺動画が消えない根本的な理由から、詐欺師が使う最新の手口、ユーザーが取るべき自衛策、万が一被害に遭った際の相談窓口まで、2026年5月時点の最新動向を踏まえて分かりやすく解説していきます。

YouTubeで詐欺動画が通報しても消えない5つの主な理由
YouTubeで詐欺動画が通報しても消えない理由は、大きく5つの構造的要因に集約されます。第一に、通報機能は審査の対象登録であり、即時削除を担保する仕組みではありません。第二に、AI審査システムには文脈理解の限界があり、巧妙に偽装された詐欺動画を見抜けないケースが多発しています。第三に、詐欺師たちはクローキング、アカウントの大量生成、チャンネル乗っ取り、ディープフェイクなど技術的に高度な回避手法を駆使しています。第四に、広告収入を主軸とするGoogleのビジネスモデルと、詐欺広告の徹底排除との間に経済的なジレンマが存在します。そして第五に、毎分500時間を超える新規動画がアップロードされる物理的なボリュームに、人的リソースが追いついていません。これらの要因が複雑に絡み合うことで、ユーザーが繰り返し通報しても、詐欺動画がプラットフォーム上に残り続ける状況が生まれているのです。
YouTubeの通報(報告)機能とは:審査の仕組みを正しく理解する
YouTubeの通報機能とは、コミュニティガイドライン違反が疑われる動画や広告をユーザーが申告できる機能であり、申告内容は審査チームの判断を経て削除可否が決まる仕組みです。動画の下にある「…」メニューから「報告」を選択すると、スパム、詐欺・欺瞞、暴力的なコンテンツなどのカテゴリが表示され、該当する項目を選んで送信する流れになっています。
ここで多くのユーザーが誤解しているのは、「通報すれば即座に動画が削除される」という認識です。YouTubeの公式見解によれば、報告されたコンテンツが自動的に削除されるわけではありません。報告はあくまで「審査の対象として登録される」という意味であり、最終的な削除判断はYouTubeの審査チームが行います。同じ動画を100人が通報しても、審査チームがポリシー違反と判断しなければ、その動画はサイト上に残り続けます。
YouTubeは報告されたコンテンツを24時間365日体制で審査していると説明していますが、判断が難しいケースについては最終決定まで数日以上かかることもあります。人命に関わる緊急性の高い問題は優先処理されますが、詐欺的な内容の動画や広告は緊急性が認識されにくく、対応が後回しにされがちです。この「即時削除されない」という仕組みそのものが、詐欺動画が長期間残り続ける最初の要因となっています。
AI審査システムの根本的な限界と見落としが起こる理由
YouTubeのAI審査システムが詐欺動画を見落とす最大の理由は、AIには文脈の理解力に構造的な限界があり、巧妙に偽装された詐欺コンテンツを見抜けないからです。YouTubeはコンテンツ審査に機械学習と人間によるレビューを組み合わせていますが、現状の技術水準では完全な検出は困難な状況にあります。
たとえば、「投資で大きく稼げる」という表現が詐欺的なものなのか、それとも正当な投資教育コンテンツなのかを、映像と音声だけからAIが正確に判断することは極めて難しい作業です。詐欺動画の多くは、表面上は普通の投資情報動画や経済ニュースのような体裁で作られており、見た目は普通だが実態は詐欺というコンテンツの判別は、現在のAI技術では限界に近い領域となっています。
さらに、AIによる誤審査の問題もあります。デリケートな話題を扱った正当な動画が誤ってブロックされる一方で、巧妙に偽装された詐欺動画はすり抜けてしまうという逆転現象が後を絶ちません。AIの判断基準が公開されていないため、詐欺師たちはその基準のすき間を狙う手法を研究し、常にAIを出し抜こうとしています。
加えて、YouTubeには毎分500時間以上の動画がアップロードされていると言われています。これほど膨大な量のコンテンツを限られた人的リソースで完全に確認することは物理的に不可能であり、AIによる自動審査が大部分を担わざるを得ない構造的な制約があります。
そして2024年頃から急増したのが、生成AIで作られたコンテンツの問題です。生成AIの技術が急速に進化し、一般人でも比較的容易にリアルな偽動画(ディープフェイク)を作れるようになりました。AI生成コンテンツを検出するためのAIとの「いたちごっこ」は2026年現在も続いており、プラットフォーム側の対応が追いつかない状態が継続しています。
詐欺師がYouTubeの審査をすり抜ける巧妙な手口
YouTubeの審査をすり抜けるために、詐欺集団は技術的・運用的に高度化した複数の手口を組み合わせて使用しています。代表的な手法は、クローキング、アカウントの大量生成、チャンネル乗っ取り、そしてディープフェイクの活用です。それぞれの仕組みを詳しく見ていきます。
クローキング:審査時だけ正常コンテンツを表示する技術
クローキングとは、審査担当者やAIがアクセスしたときだけ正常なコンテンツを表示し、一般ユーザーがアクセスすると詐欺サイトへ誘導する技術的な手法です。広告の場合、審査時には「まともな商品紹介サイト」を表示しておき、審査通過後にリンク先を詐欺サイトに切り替える方式が代表的です。特定のIPアドレス(審査担当者と思われる接続元)からのアクセスに対しては正常ページを、それ以外には詐欺ページを見せるという地理的セグメンテーションの悪用も確認されています。この手口では、最初のチェック段階で詐欺と見抜くことが原理的に困難なため、通報されても「問題なし」と判断されてしまうのです。
アカウントの使い捨てと大量生成
Googleアカウントとクレジットカードがあれば誰でも広告を出稿できる仕組みを悪用し、詐欺集団は大量のアカウントをあらかじめ準備しています。あるアカウントで配信していた詐欺広告が削除されても、即座に別のアカウントから同じ内容の広告を出稿し直すことが可能です。アカウントの作成コストはほぼゼロに近く、削除と新規作成のいたちごっこが続くため、一時的に消えても同じ詐欺がすぐに復活する構造が生まれています。
チャンネル乗っ取りによる「実績の悪用」
一定の登録者数を持つ既存チャンネルを乗っ取り、そのチャンネルで詐欺コンテンツを配信する手口も多発しています。長期間にわたって正当なコンテンツを配信してきた「実績のある」チャンネルを使うことで、AIや審査担当者の警戒を低下させる狙いがあります。乗っ取りには、フィッシングメールやセキュリティ上の脆弱性を突いたCookie情報の窃取が使われます。2020年代以降、主流となっているのは、ブラウザに保存されたログイン情報を含むCookieデータを盗み取り、本人のアカウントとして不正ログインする手法です。
AI生成の偽動画(ディープフェイク)の急増
近年特に深刻な問題となっているのが、ディープフェイク技術を活用した詐欺動画です。著名な投資家、経営者、芸能人の映像にAIで生成した音声を合成し、その人物が実際に投資サービスや仮想通貨取引を勧めているかのように見せかけます。2024年には、ディープフェイクを利用した詐欺の試行件数が前年比3000%以上増加したというデータが報告されました。世界的に知名度の高い人物の偽動画が1000本以上YouTube上に確認されたという報告もあります。日本でも、著名な投資系YouTuberの映像と声をAIで模倣した詐欺広告が出回り、本人のもとに100件を超える問い合わせが殺到したケースが確認されました。
Googleのビジネスモデルと詐欺対策の構造的な矛盾
YouTubeの詐欺動画問題を考えるうえで避けて通れないのが、Googleのビジネスモデルと詐欺対策の間にある構造的な矛盾です。GoogleとYouTubeの収益は広告収入に大きく依存しており、広告が多く表示されるほど収益が増える仕組みになっています。
詐欺広告であれ正当な広告であれ、出稿された広告に対してGoogleは広告費を受け取る構造です。完全な詐欺広告の撲滅を最優先すれば、広告収入が減るという経済的なインセンティブが働いてしまいます。GoogleやYouTubeが詐欺広告を意図的に放置しているわけではないものの、「詐欺広告対策の強化」と「広告収入の確保」という二つの目標が本質的に対立する側面は否定できません。
また、プラットフォームとしての「責任の範囲」という法的な問題もあります。広告主が詐欺行為を行っていても、広告そのものに明確な違法表現が含まれていない場合、プラットフォームがどこまで介入できるかという論点が残ります。詐欺師たちはこのグレーゾーンを巧みに突き、広告審査の段階では問題のない表現しか使わず、リンク先の詐欺サイトへ誘導するという二段階構造を作り上げて、プラットフォームの責任追及を逃れようとしています。
Googleは2023年に全世界で55億件の広告をブロックまたは削除し、1270万件の広告アカウントを停止したと公表しました。確かに膨大な数ですが、逆に言えばそれだけの数の不正広告が実際に存在していたということでもあります。対応のスピードが詐欺の増殖スピードに追いついていないのが現実です。
詐欺師が広告審査をすり抜けるメカニズムの詳細
詐欺師がYouTube広告の審査システムをすり抜ける仕組みは、年々高度化しています。具体的なメカニズムを理解することで、なぜ通報しても詐欺が根絶されないのかがより明確になります。
まず、広告出稿のハードルの低さという問題があります。YouTube広告を出稿するために必要なのは、基本的にはGoogleアカウントと広告費だけです。クレジットカードさえあれば、ほぼ誰でも広告主になれます。詐欺師たちはこの低いハードルを利用し、使い捨てアカウントで次々と広告を出稿しては、削除されたら別のアカウントで再出稿するというサイクルを繰り返しています。
次に、広告審査AIの構造的な弱点があります。YouTubeの広告審査AIは、主に広告のテキスト、画像、リンク先URLなどを自動的にスキャンしてポリシー違反を検出する仕組みです。詐欺師はこの仕組みを逆用し、広告クリエイティブ自体には問題のない表現しか使わず、遷移先のランディングページで詐欺的な行為を行う二段階戦略を取ります。広告そのものには「投資情報サービス」「資産形成の相談」といった問題のない表現を使い、クリックした先で高額な詐欺商品への勧誘を行うのです。審査AIはランディングページの内容まで深く審査することが技術的に難しく、このすき間を詐欺師が巧みに突いています。
また、審査パターンの学習という問題もあります。詐欺師たちは過去の経験や情報共有を通じて、どのような表現や手法がAI審査をすり抜けやすいかを学習しています。詐欺業者同士でノウハウを共有したり、ダークウェブ上で審査すり抜けのためのツールや情報が売買されたりしている実態もあります。これにより、審査AIが特定のパターンを学習して対策を強化すると、詐欺師側もすぐに新しいパターンに切り替えるという適応の連鎖が生まれています。
YouTube詐欺動画の被害実態:2025年〜2026年の最新統計
YouTube上の詐欺動画・詐欺広告による被害は、日本国内でも年々深刻化しています。警察庁の統計によれば、2025年上半期の特殊詐欺による被害額は約597億3000万円で、前年同期比162.1%増という驚異的な増加率となり、過去最悪を記録した2024年の被害額をすでに上回るペースで被害が拡大しました。これらの詐欺の多くは、SNSや動画プラットフォームを入口として利用していると分析されています。
| 統計項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 2025年上半期の特殊詐欺被害額 | 約597億3000万円 | 前年同期比162.1%増 |
| 2023年のGoogle広告ブロック件数 | 約55億件 | 全世界 |
| 2023年に停止された広告アカウント | 約1270万件 | 全世界 |
| 2024年のディープフェイク詐欺試行件数 | 前年比3000%以上増 | 国際統計 |
| 2027年の世界詐欺被害額予測 | 6兆円超 | ディープフェイク含む |
具体的な被害事例としては、島根県浜田市の60代男性がYouTubeで見た投資広告を入口に著名人とのLINEグループへ誘導され、最終的に700万円をだまし取られたケースが報告されました。このように、YouTubeの詐欺広告はユーザーをLINEやテレグラムなどのメッセージアプリに誘導し、そこで段階的に信頼を築いてから多額の投資金をだまし取る手口が定着しています。
国際的に見ても、ディープフェイクを活用した詐欺の被害は急速に拡大しており、2027年には世界全体での被害額が6兆円を超えるという予測も発表されています。詐欺技術の進化は止まらず、AIによるなりすましの精度は年々向上しているため、今後もこの問題が悪化していくことが懸念されています。
YouTubeの詐欺動画を通報する正しい手順と効果を高めるコツ
YouTubeで詐欺動画を通報する手順は、動画再生画面の右上にある「…」(その他のオプション)メニューから「報告」を選択し、「スパムまたは詐欺的なコンテンツ」を選んで具体的なカテゴリを選択して送信するという流れになります。広告を通報する場合は、広告の右上に表示される「i」アイコンまたは「✕」ボタンから「この広告についてフィードバックを送信」を選び、理由を入力して送信します。
ただし、前述のとおり通報は削除を保証するものではありません。YouTubeの審査チームが違反を確認した場合のみ削除されます。通報の効果を高めるためには、できるだけ具体的な理由を記載し、なぜ詐欺だと判断したのかの根拠を明確に説明することが重要です。「著名人の顔を無断使用している」「リンク先がフィッシングサイトである」「ディープフェイクで作られた音声である」など、具体的な情報を添えると審査の判断材料となります。
また、有名人の無断使用が疑われる場合は、その有名人本人や所属事務所に情報を伝えることも有効です。権利者からの申告は、一般ユーザーからの通報よりも優先的に処理される場合があります。さらに、消費者庁の「消費者ホットライン(188)」や国民生活センターへの相談も選択肢として覚えておくとよいでしょう。
ユーザー自身が取るべき自衛策:詐欺動画から身を守る方法
YouTubeの詐欺動画から身を守るためにユーザーが実践できる自衛策は、「うますぎる話に飛びつかない」という基本姿勢を中心に、リンク先の確認、複数情報源での裏取り、個人情報の入力を控える、LINE誘導への警戒、セキュリティソフトの導入という多層的なアプローチです。
「うますぎる話」を絶対に信用しない
詐欺動画の多くは、「元手0円で月収100万円」「この方法で誰でも資産1億円」といった現実離れした高額報酬を謳っています。どれだけ著名人が推薦しているように見えても、こうした内容は詐欺と疑ってかかることが最大の防衛策です。YouTubeがキャンペーンを行って商品を安く提供したり、高額報酬を提供したりすることは原則ありません。
リンク先のURLを必ず確認する
広告や動画内でURLが紹介された場合は、即座にクリックしないことが重要です。まずリンク先のURLをよく確認し、公式サイトのURLと一致しているかを見ます。表示されているドメインが似ているようでわずかに違う「タイポスクワッティング」も多いため、注意深く確認する必要があります。検索エンジンで公式サイトを別途検索し、そこからアクセスする習慣を持つほうが安全です。
複数の情報源で裏付けを取る
一つの動画や広告の情報だけを鵜呑みにせず、複数の信頼できる情報源で内容を確認する習慣を持つことが大切です。本物の著名人であれば、公式サイトやSNSでその情報が告知されているはずです。そういった裏付けがない場合は、詐欺の可能性が高いと考えるべきでしょう。
個人情報や金融情報を安易に入力しない
詐欺サイトに誘導された際に、個人情報、金融機関の口座情報、仮想通貨のウォレット情報などを入力してしまうと、直接的な被害につながります。「投資登録」「無料会員登録」といった名目で情報の入力を求められた場合は、詐欺の可能性を強く疑うべきです。
LINEやメッセージアプリへの誘導に警戒する
YouTubeの詐欺広告の多くは、LINEやテレグラムなどのメッセージアプリへの誘導を伴います。動画や広告からLINEへ誘導された後、著名人や「専門家」を名乗る人物とのやり取りを通じて信頼を築き、最終的に高額の投資を勧める手口が多発しています。こうした誘導には絶対に乗らないことが重要です。
セキュリティソフトを活用する
セキュリティソフトの中には、詐欺サイトへのアクセスをブロックする機能を持つものもあります。万が一詐欺リンクをクリックしてしまった場合でも、セキュリティソフトが被害を未然に防いでくれる可能性があります。家庭のすべてのデバイスに信頼できるセキュリティソフトを導入することは、デジタル時代の基本的な備えです。
YouTubeと業界の取り組み・今後の課題
詐欺問題に対し、YouTubeやGoogleも対応を強化しています。YouTubeは2024年に、声や肖像を無断で使用したAI生成コンテンツに対して削除要請ができる仕組みを導入しました。また、AIを悪用した偽コンテンツへの対応として、ラベル付けの義務化なども進められています。2026年に入ってからは、量産型コンテンツへの規制強化やAI生成コンテンツの取り締まりがさらに進んでいますが、詐欺師たちは規制の変化に素早く対応し、新たな手口を開発し続けているのが実情です。
特に深刻なのが、生成AIの民主化による詐欺動画の製造コストの低下です。かつては高度な技術が必要だったディープフェイク動画も、今では一般人でも簡単に作れるようになっています。詐欺師が詐欺動画を作るコストが下がれば、それだけ大量の詐欺動画が拡散される構造が強化されてしまいます。
プラットフォームの責任を法律で明確化しようという動きも各国で見られます。欧州連合(EU)のデジタルサービス法(DSA)は、プラットフォームに対してより積極的な違法コンテンツの削除義務を課しており、日本でも同様の規制を求める声が高まっています。しかし、言論の自由やプラットフォームの中立性との兼ね合いから、規制の枠組み作りは難航しており、即効性のある解決策は見えていないのが現状です。
根本的な解決には、技術的な対応の強化だけでなく、ユーザーリテラシーの向上、法規制の整備、プラットフォームの透明性確保、そして国際的な連携による詐欺集団の摘発という多方面からのアプローチが必要となっています。
日本特有の問題と制度的な対応
日本でYouTubeの詐欺動画問題が特に深刻な背景には、いくつかの日本特有の要因があります。まず、投資リテラシーの課題です。日本では長らく「投資より預金」という文化が根強く、投資に不慣れな層が多くいます。そこにコロナ禍以降の「副業ブーム」や「老後2000万円問題」を背景にした投資への関心の高まりが重なり、投資情報を求める人が急増しました。経験の浅い投資初心者は、詐欺的な投資情報と正当な投資情報を見分ける知識が乏しく、巧妙に作られた詐欺動画にだまされやすい状況にあります。
次に、高齢化社会という問題があります。詐欺の被害者は高齢者に集中する傾向がありますが、YouTubeの普及に伴い、スマートフォンで動画を視聴する高齢者も増加しています。デジタルリテラシーが比較的低い高齢者層は、ディープフェイク動画の見分け方や詐欺的な広告の特徴を知らないまま被害に遭うリスクが高い状況です。
制度的な対応として、日本政府も動き出しています。令和7年(2025年)に策定された「国民を詐欺から守るための総合対策」では、SNSや動画プラットフォームを通じた詐欺広告への対応強化が盛り込まれており、プラットフォーム事業者への規制強化が検討されています。また、消費者庁も詐欺広告に対する注意喚起を強化し、被害を受けた際の相談窓口の周知活動を進めています。
しかし、YouTubeのような海外プラットフォームに対する日本の法的規制には限界があります。国際的な管轄権の問題や表現の自由との兼ね合いから、国内法だけでは対応しきれない部分が多く、プラットフォーム企業に対する自主的な対応強化の要請と、国際的な連携による法的規制の両輪が必要とされている状況です。詐欺師の多くは海外を拠点とした組織的な犯罪グループであり、国内の警察が単独で摘発することは難しいのが実情で、インターポールなどを通じた国際的な捜査協力が求められています。
YouTubeの詐欺動画についてよくある疑問
YouTubeの詐欺動画に関して、多くのユーザーが抱く疑問にお答えしていきます。
「同じ詐欺動画を何回も通報したら削除されやすくなりますか」という質問がよく寄せられます。結論として、通報数が多ければ優先的に確認される傾向はあるものの、最終判断は審査チームのポリシー違反認定にかかっているため、回数を重ねても削除を保証するものではありません。ただし、複数のユーザーが同時に通報することで、審査の優先度が上がる効果は期待できます。
「YouTubeの詐欺広告で被害に遭った場合、Googleは補償してくれますか」という疑問もあります。基本的にGoogleは広告主と視聴者の間のトラブルについて、直接的な金銭補償を行う立場にはありません。被害が発生した場合は、警察への被害届、消費生活センターへの相談、クレジットカード会社へのチャージバック申請など、複数の窓口を活用する必要があります。
「ディープフェイク動画かどうかを見分ける方法はありますか」という問いについては、目の動き、口の動きと音声の同期、肌の質感、影の不自然さなどに違和感がないかを確認することが基本です。ただし、2026年時点でディープフェイク技術は人間の目では見分けられないレベルに達しているケースも多く、動画の内容そのものが「うますぎる話」「焦らせる表現」を含んでいないかを判断材料にすることが、より現実的な防衛策となっています。
「通報後どれくらいで削除されますか」という質問もよく聞かれます。緊急性が高いと判断されたものは数時間以内に削除されることもありますが、一般的には数日から数週間かかる場合が多いとされています。中には、通報されても削除に至らないケースもあり、これが「通報しても消えない」という体感の正体となっています。
被害に遭った場合の対処法と相談窓口
万が一YouTubeの詐欺動画や詐欺広告によって被害を受けた場合は、速やかに公的な相談窓口へ連絡することが、被害の拡大を防ぐ最も確実な方法です。
消費者ホットライン(188)は、全国の消費生活センターや国民生活センターにつながる相談窓口で、消費生活に関するトラブル全般について無料で相談できます。投資詐欺や通販詐欺など、インターネット上の詐欺被害についても対応しています。
警察相談専用電話(#9110)は、詐欺被害の被害届を提出したり、犯罪の疑いがある行為を通報したりする際に利用できます。実際に金銭的な被害が発生している場合は、最寄りの警察署に被害届を提出することも重要です。
国民生活センターは、消費者トラブルに関する情報収集と解決の支援を行っている機関で、ウェブサイト上に詐欺被害の事例や対処法が詳しく掲載されています。
クレジットカードで代金を支払ってしまった場合は、すぐにカード会社に連絡してチャージバック(支払い取り消し)を申請することが重要です。金融機関への振り込みが発生した場合は、振込先の金融機関にも速やかに連絡することで、被害の拡大を防げる可能性があります。
詐欺被害は恥ずかしいことではなく、高度に巧妙化した詐欺師の手口によるものだと理解することが大切です。一人で抱え込まず、専門機関に相談することが早期解決への近道となります。被害情報を共有することは、新たな被害者を生み出さないための社会的な貢献にもつながります。
まとめ:YouTubeの詐欺動画が消えない理由と私たちにできること
YouTube上の詐欺動画が通報しても消えない理由は、一言では説明できない複合的な問題です。YouTubeの通報・審査システムは「即時削除」を保証するものではなく、人間やAIによる審査を経て初めて削除が決定されるため、どれだけ多くの人が通報しても、審査チームが違反と認定しなければ動画は残り続けます。AI審査システムには、巧妙に偽装された詐欺コンテンツを完全に見抜く能力がまだなく、特にクローキングやAI生成ディープフェイクなど高度な技術を使った詐欺には対応が追いついていません。詐欺師たちはアカウントを使い捨てにしたり、大量のアカウントを準備したりして、削除されてもすぐに同じ詐欺を復活させます。毎分500時間以上の動画がアップロードされる膨大な量に対して審査リソースが追いついていないという物理的な制約もあり、広告収入を主要収益源とするGoogleのビジネスモデルが詐欺広告の徹底排除を難しくしている側面も否定できません。
こうした構造的な問題を一夜にして解決することは難しいものの、私たち一人ひとりが詐欺の手口と見抜き方を知り、怪しいコンテンツに対して慎重に行動することで、被害を防ぐことは十分に可能です。「うますぎる話には裏がある」という原則を常に念頭に置き、感情的に行動する前に一歩立ち止まって冷静に情報を確認する習慣を持つことが、現代を安全に生きるための最大の防衛策となります。詐欺被害に遭ってしまった場合は、すぐに消費者ホットライン(188)や最寄りの警察署、消費生活センターに相談することが、被害拡大を防ぐ第一歩です。
YouTubeという巨大プラットフォームから詐欺を完全になくすことを期待するのは現実的ではないかもしれませんが、ユーザーとして正しい知識を持ち、冷静に行動することで、自分自身と周囲の人を詐欺被害から守っていくことが、今できる最善の選択肢といえます。








