KDDIと楽天モバイルのローミング終了は2026年9月末、7年協業に区切り

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KDDIと楽天モバイルのauローミング提供は、2026年9月末をもって基本的に終了します。KDDI代表取締役社長の松田浩路氏が2026年8月7日の決算説明会でこの方針を明言しました。郊外エリアについては期間を限定した形で一部継続するとされており、2019年10月の開始から約7年続いた協業がひとつの区切りを迎えます。この記事では、終了に至った経緯と技術的な背景、楽天モバイル側の対応、そして利用者が今後注意すべき点を整理してお伝えします。

目次

KDDIは楽天モバイルへのローミングを2026年9月末で終了する方針を決算説明会で表明

KDDIは、2027年3月期第1四半期決算説明会において、楽天モバイル向けローミングを2026年9月末の契約期日で終了する方向にあることを明らかにしました。松田社長は「5月に発表したものと大きく変わらない」と述べ、突然の方針転換ではなく、以前から示していた考えの延長にあることを強調しています。

そのうえで「本来の目的を果たした」「現在の契約期日である9月末で終了する方向で進めている」と明言しました。楽天モバイルの人口カバー率を補うために7年にわたって提供してきたローミングは、自社回線エリアが全国に広がったことで役割を終えたというのが松田社長の認識です。ただし、すべてのエリアで即座に打ち切られるわけではありません。郊外(ルーラルエリア)については「基地局整備は自らでやってもらう」という前提のもと、期間を定めて一部継続する方針が示されました。

ローミング終了の理由は想定を超えるトラフィック増加によるau品質低下

KDDIがローミング終了に踏み切る直接のきっかけは、想定を超えるトラフィック増加でした。松田社長は「想定外のエリアからの通信がKDDIのネットワークに来ている部分があった」と述べ、au・UQ mobile・povoを利用する自社顧客にネットワークリソースを優先的に割り当てる判断を下したことを明かしています。

楽天モバイルの利用者がau回線にローミングする通信量が想定を超えて増加し、KDDI自身の顧客の通信品質に影響が及びかねない状況が生じていたわけです。他社の顧客のためにリソースを割いた結果、自社顧客の体験が損なわれるようでは本末転倒であり、自社ユーザーを優先する経営判断だったと見てよいでしょう。都市部ではすでに楽天モバイルの自社回線整備が進んでいる一方、人口密度の低い地方では基地局投資の回収が難しく、ローミングへの依存度が相対的に高いとみられます。急激な打ち切りによる混乱を避けるための経過措置として、郊外向けの継続方針が用意されたと考えられます。

KDDIと楽天モバイルのローミング協定は2019年10月開始から7年で区切りを迎える

KDDIと楽天モバイルのローミング協定は、2019年10月1日に始まりました。当時の楽天モバイルは携帯電話事業に新規参入したばかりで、自社基地局の整備が全国に行き渡っていなかったため、既存キャリアであるKDDIの回線を借りてサービスエリアの空白を埋める必要がありました。「国内通信事業者の健全なサービス競争の促進に寄与すること」を目的として、楽天モバイルの第4世代移動通信サービスの立ち上げを支援する形で始まった提供です。

2023年6月からは新協定が適用され、それまで対象に含まれていなかった東京都23区・名古屋市・大阪市といった都市部の一部繁華街エリアが新たに加えられ、提供期間も2026年9月まで延長されました。この延長により、都市中心部の混雑しやすいエリアもKDDI網でカバーする体制が続けられてきました。今回の松田社長の発言は、この2026年9月30日という契約期日をそのまま迎え、更新せずに終了へ向かう意向を、決算説明会という公式な場で改めて明確にしたものです。開始から数えると、ちょうど7年にわたる協業がひとつの節目を迎えることになります。

5月の決算説明会でも示されていた方針の延長線上にある

松田社長が「5月に発表したものと大きく変わらない」と述べた背景には、2026年5月13日の決算説明会で示していた方針があります。当時から松田社長は、楽天モバイルへのauローミングについて「当初の役割を終えたのではないか」との認識を示し、9月の契約満了を機に協業のあり方を見直す姿勢を明らかにしていました。

このとき松田社長は、楽天モバイルの利用者が通信に困るようであれば、基本料0円のpovoを副回線として利用してもらう形で支援できないかというアイデアも示していました。ローミングという「エリア補完」の形から、povoのような別回線を組み合わせる「デュアルSIM的な補完」へと、両社の協業のあり方そのものを転換させる可能性を示唆した発言といえます。通信が不安定になりがちな地域や端末を持つユーザーにとって、メイン回線とは別に緊急用のサブ回線を持っておく需要は一定数存在しており、povoを楽天モバイルのバックアップとして使う組み合わせは、KDDIにとってARPU(ユーザーひとりあたりの平均収入)を確保する新たな収益源になり得ます。

楽天モバイルの三木谷会長はユーザーへの影響を最小化する方針を強調

楽天グループの三木谷浩史会長は、KDDIとのローミング協業に感謝の意を示しつつ、ローミング終了に際して「一番重要なのはユーザーに迷惑をかけないこと」だと強調しています。この発言は裏を返せば、楽天モバイル自身もローミング終了が利用者の通信環境に何らかの影響を及ぼしうると認識していることの表れでしょう。

もっとも、具体的にどのような代替策を講じるのか、詳細な発表は現時点では限定的です。楽天モバイルとKDDIの協議は継続中とされ、10月以降の協業のあり方については引き続き調整が行われている段階です。

ローミング終了で一部地域が圏外になる懸念がある

今回の方針が実際に9月末で実行された場合、これまでKDDI網でカバーされていた地域の一部で、楽天モバイルの電波が圏外になる可能性があります。人口が少ない地方や郊外では楽天モバイルの自社基地局整備がまだ十分に進んでいない場所も残っており、auローミングへの依存度が高いとみられるためです。

実際、2026年6月ごろから一部エリアでローミングの対象範囲が段階的に縮小され、「楽天モバイルが急につながりにくくなった」と感じるユーザーの声も報告されました。KDDI側は、楽天モバイルが自社エリアとして整備を終えた場所から順次ローミングを終了しているとの立場を示しており、あくまで「自社回線が整った場所からの整理」だと説明しています。もっとも、利用者からすれば体感する電波状況の変化として現れるため、不安の声が広がりやすいテーマです。郊外については「期間を定めて」インフラ維持に協力するとされているため、地方エリアのすべてが9月末で即座に圏外化するわけではなさそうです。ただし、あくまで期間限定かつ一部エリアに限定した措置とされており、いずれは終了に向かうことが前提になっている点には注意が必要でしょう。

楽天モバイルは基地局整備を加速し2026年度に2000億円強を投資する計画

楽天モバイルは、ローミング終了を見据えて自社基地局の整備を加速させています。2026年3月時点で約1万局を超える基地局設置計画を進めており、2025年末までに4Gと5Gの基地局を1万局以上追加する見込みだったとされています。さらに2026年7月には、全国32都道府県77市区町村で新たな基地局を設置するなど、継続的にエリア整備を進めました。

楽天グループは2026年度、ネットワーク関連設備投資として2000億円強を計画しており、前年実績の629億円から大幅に増額して基地局建設のペースを加速する方針です。楽天回線エリアの4G人口カバー率はローミングエリアを含めてすでに99.9%に達しているとされ、5G SA(スタンドアローン)方式の展開も2026年内に開始される見込みです。将来的には衛星通信の活用による国土カバー率100%の実現も視野に入っているとされています。応急的な対応として、楽天モバイルは「WiFiスポット」の提供を開始しました。ローミング終了で「つながらない」と感じるユーザーに向けた局所的な救済策で、自社基地局の整備が完了するまでのつなぎの施策とみられます。

衛星通信サービスは2026年10月から12月に開始予定でローミング終了と数か月のずれが生じる

中長期的な対応策として注目されているのが、衛星通信サービスです。楽天モバイルは、米国のAST SpaceMobile社の衛星を活用した「Rakuten最強衛星サービス」を2026年第4四半期(10月から12月)に開始する計画を示しています。スマートフォンが直接衛星と通信することでブロードバンドの面積カバー率100%を目指すもので、KDDIが提供する「au Starlink Direct」がメッセージ中心の対応であるのに対し、動画視聴やSNS利用まで見据えた本格的なデータ通信への対応を目指している点が特徴です。あわせて、現在NSA(ノンスタンドアロン)方式で運用されている5Gについても、2026年内にSA(スタンドアロン)方式への移行を計画しており、シスコ・ノキア・F5といった通信機器ベンダーと提携しながら、低遅延かつ高速な通信網の実現を目指しています。

ただし、ここには見過ごせないタイミングのずれがあります。KDDIによるローミング終了は2026年9月末を予定している一方、衛星通信サービスの開始は同年10月以降です。両者の間には数か月単位の空白期間が生じる可能性があります。この間、自社基地局の整備が追いついていない地域では、ローミングにも衛星通信にも頼れない「エリアの谷間」が一時的に生じるおそれがあり、楽天モバイルにとっては基地局整備のスピードとサービス開始時期の調整が今後の焦点になりそうです。

KDDIは自社顧客優先へ転換しpovo副回線構想で新たな収益源を模索している

KDDIにとって、楽天モバイルへのローミング提供は一定の収入源であった一方、自社ネットワークのリソースを他社ユーザーのために割く必要があるという側面も持っていました。想定を超えるトラフィックが楽天モバイルユーザーからKDDI網に流入していたことが明らかになったことで、au・UQ mobile・povoといった自社ブランドの通信品質を優先する姿勢がより鮮明になったと言えます。

一方で、ローミング収入がなくなることはKDDIにとって収益面でのマイナス要因にもなり得ます。松田社長がpovoを楽天モバイルの副回線として提供する構想を示すのは、ローミングという形での協業に代わる新たな収益機会を模索しているからでしょう。業界内では、両社の関係が「エリア補完」から「協調と競争が併存する新たな段階」へ移行しつつあるとの見方も出ています。

楽天モバイルの契約回線数は2026年3月末時点で1036万回線に到達した

ローミング終了という節目を考えるうえで、楽天モバイルの現在の事業規模を押さえておくことも重要です。楽天グループが2026年5月14日に発表した2026年度第1四半期決算によれば、楽天モバイルの全契約回線数は同年3月末時点で1,036万回線に到達しました。モバイル事業の売上は前年同期比18.5%増と伸びを見せており、依然として損失は続いているものの、その改善幅は着実に広がっています。

2019年10月のサービス開始当初、楽天モバイルはゼロからの契約者獲得と基地局整備という二重の課題を抱えるスタートアップ的な立場にありました。それから約7年、契約回線数が1,000万を超える規模にまで成長したことは、KDDIが「当初の役割は終えたのではないか」と語る根拠のひとつになっているとみられます。ローミングというインフラ支援なしでも一定の事業基盤を築けるだけの体力がついてきた、という評価が背景にあると読み取れます。

業界では「敵に塩を送る」との見方も出ている

今回のローミング終了方針をめぐっては、通信業界の内外から「KDDIが楽天モバイルに揺さぶりをかけているのではないか」との見方も出ています。日本経済新聞などの報道では、楽天モバイルが契約者数を伸ばして急成長するライバルへと変貌しつつある中で、KDDIが回線貸し出しという協業の範囲を縮小する動きを見せていることについて、「敵に塩を送る」形になっているのではないかとの懸念が指摘されました。

KDDIにとって楽天モバイルは、当初は業界の競争を促進するために支援すべき新規参入者でした。しかし契約者数で1,000万回線を超える規模に成長した現在では、au・UQ mobile・povoの顧客を奪い合う直接的な競合相手という側面が強まっています。ローミングという形でインフラを提供し続けることは、結果的にライバルの成長を後押しすることにもつながりかねません。KDDIとしては自社の経営判断としてその関係性を見直す局面に来ている、という構図が業界関係者の間で語られています。実際、2023年に締結された協定をめぐっても、東京23区や大阪・名古屋といった都市部までローミング対象が拡大されたことについて、KDDI社内から「配慮が行き過ぎているのではないか」といった趣旨の声が上がっていたとも報じられており、今回の「9月末で終了」という方針は、そうした社内外の空気も踏まえた決断だった可能性があります。

povo副回線構想は楽天モバイルにとって諸刃の剣との指摘がある

KDDIの松田社長が提案する「povoを楽天モバイルの副回線として活用する」というアイデアは、必ずしも楽天モバイルにとって手放しで歓迎できる話ではないという分析も出ています。テクノロジーメディアの報道では、この構想を「毒リンゴ」に例える表現も用いられており、一見魅力的な支援策に見えても、実際に楽天モバイルユーザーがpovoを併用するようになれば、KDDI側に新たな顧客接点と収益機会を与えることになり、長期的には楽天モバイル自身の顧客基盤を脅かしかねない、という見立てです。

通信が不安定になりやすいメイン回線の保険として、povoのような基本料0円で持てるサブ回線を契約するユーザーは増加傾向にあるとされ、楽天モバイルやドコモのahamoといった料金プランに不満を感じるユーザーの受け皿としてpovoが機能しているとの分析も報じられています。ローミング終了によって楽天モバイルの通信品質への不安が高まるほど、この構図でpovoへの乗り換え・併用が進みやすくなるというねじれた力学が働く可能性があります。KDDIにとってはローミング収入の減少を補って余りある新たな収益源になり得る一方、楽天モバイルにとっては痛し痒しの提案だと言えるでしょう。

商業ローミングと非常時ローミングのJAPAN Roamingは別の制度

今回終了が取り沙汰されているKDDIと楽天モバイルの間のローミングは、あくまで両社間の商業的な協定に基づくものです。災害時などに携帯電話会社同士が回線を融通し合う「非常時ローミング」とは制度上まったく別のものである点には注意が必要です。総務省が主導する非常時ローミングは、大規模災害や通信障害の発生時に、契約している通信事業者にかかわらず圏内にある他社の基地局を利用できるようにする仕組みで、NTTドコモ・KDDI(沖縄セルラーを含む)・ソフトバンク・楽天モバイルの国内主要4社が2026年4月1日から「JAPAN Roaming」というブランド名で提供を開始しました。今回KDDIが終了を進めているのは、この非常時ローミングではなく、楽天モバイルの通常のサービスエリアを平時から補完するための商業的なローミング契約であり、両者を混同しないよう留意したいところです。

そもそも、KDDIが楽天モバイルにローミングを提供してきた背景には、総務省が長年進めてきた携帯電話市場の競争促進政策があります。2024年度末時点でも、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの大手3社は国内の携帯電話サービス市場で9割超のシェアを握っており、総務省は事業者間の乗り換えのハードルを下げる施策や、楽天モバイルのような新規参入者・MVNO事業者を支援する政策を通じて、市場の競争性を高めることを目指してきました。楽天モバイルが2017年に携帯電話事業への参入意向を表明して以降、既存の大手キャリアの回線網を間借りできるローミングは、こうした新規参入支援の枠組みのひとつとして機能してきたと言えます。

その意味で、今回のローミング終了は単なる一企業間の契約満了にとどまりません。「新規参入者を支援する時期」から「対等な競争相手として向き合う時期」へと、日本の携帯電話市場の構図そのものが変化しつつあることを象徴する出来事だと捉えられます。2026年に入ってから議論が本格化しているスマートフォンの値引き規制の見直しなど、携帯料金・競争政策をめぐる制度面の見直し議論とも、今回のローミング終了は間接的に関連しているとの指摘もあります。

楽天モバイル利用者は今後数か月の電波状況を自分の生活圏で確認しておく必要がある

現時点(2026年8月7日)では、KDDIは9月末での契約期日をもってローミングを基本的に終了する方向で調整を進めている一方、郊外エリアについては期間を定めた形での協力継続を示唆しており、両社の協議自体は継続中です。10月以降、実際にどの範囲でローミングが縮小・終了するのか、また代替策としてのpovo副回線構想やWiFiスポットがどこまで拡充されるのかは、今後の両社の発表を注視する必要があるでしょう。

楽天モバイルを利用している方は、今後数か月の間に自身の生活圏や行動範囲において電波状況に変化がないか、実際に確認しておくことが重要になります。特に地方や郊外での利用が多い方は、ローミング終了によるエリアの変化が生活に直結する可能性があるため、公式発表や実際の通信状況を継続的にチェックしておくのが望ましいところです。

一方で、KDDI・楽天モバイル双方ともユーザーの通信環境に配慮した移行を目指す姿勢を示していることから、9月末をもって突然すべてのローミングが打ち切られるというよりは、段階的かつエリアを限定した形での移行が進んでいくとみられます。今回の決算説明会での松田社長の発言は、そうした移行プロセスの方向性を改めて公式に確認するものだったと言えるでしょう。

いずれにせよ、2019年10月の開始から約7年間続いたKDDIと楽天モバイルのローミング協業は、2026年9月末という契約期日を境に新たな段階へと移行します。楽天モバイル参入時の「エリアの空白を埋める」という役割を終え、今後は楽天モバイル自身の基地局整備の進捗と、KDDI側が示唆するpovoなどを活用した新たな協業のあり方が、両社の関係を左右していくことになりそうです。

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